名前で呼んでよ、黒瀬くん!【完】




数分すると変わらぬ様子で教室に戻ってきた黒瀬。



男子たちはみんな黒瀬のもとに駆け寄る。




「どうだった!?告白だった!?」




「おう。」



「やっぱりなぁ〜!いいなぁ。付き合うのか?」



「さぁな。」



「なんだよそれ!あの子一年生で一番可愛いって噂の子だぞ!?」



「確かにサトミは可愛いな。」



それだけ言って、自分の席に座る黒瀬。



あの子さとみって名前なんだ。



私のことは『お前』とか『おい』とか呼ぶのに、あの子は苗字どころか名前で呼ぶんだ。



なんて、ショックを受けている自分がいた。


そんなことをグルグル考えていると隣から声がした。




「おい、お前。」


いつものように絡んでくる黒瀬。


「何?」



平然と何も気にしていないように、取り繕って答える。


「昨日の課題のプリント見せろ」



その言葉に私は、机の中をあさりクリアファイルからプリントを取り出す。


「はい。間違ってても知らないからね。」