「…なんか言えよ」
「っ、」
そう言って私を見つめる黒瀬。
そう言われたって、何も言葉は出てこなくて、なんだか体の全身が熱く痺れているような感覚だった。
黒瀬は持っていた資料を机に置いて、私の目の前に立って、私を真っ直ぐ見つめた。
その行動一つ一つにドキドキしてしまう。
「…俺は別にお前のこと嫌ってなんかない。」
何それ。
黒瀬の口から確かに発された言葉に私は驚きのあまり頭が真っ白になり、それと同時に心臓がこれでもかとドキドキと音を鳴らし始める。
いつにもなく真剣な顔をして言うからずるい。
「そんなわけ、」
働かない脳と、熱い喉からやっと出た言葉がこれ。
「……嘘じゃねぇよ」
そう言って一気に不機嫌になる黒瀬。
「…だって私のことを嫌いだからあんなに意地悪するんでしょ?」
「…お前何も分かってねぇ。バカ。クソ。ハゲ。アホ。」
それだけ言って、私を見ていた目を再び資料に移して、ホッチキスを止め始める黒瀬。



