「嘘だろ……?」

俺はため息混じりで言う。
目の前では体を震わせながら泣くカズミの姿があった。

「…園…長っ…には…言えな…くて…」

涙で上手く喋れないカズミに俺は服をかけてやり、そっと背中をさすってやった。


「…ハルマ…」

カズミは涙を溜めた瞳で俺を見た。
俺は黙って頷き、頭を撫でる。


「…ここに居て良いから…」


そう言うとカズミは安心したのか、声を荒げて泣き始めた。



カズミは、中2の時に東北の親戚の家へ預けられた。
おばさんは意地悪で、勉強どころか、学校にも行かせて貰えなかったらしい。
毎日暗い家の中で家事をし、飼い犬の散歩に行く30分だけ、外に出して貰えたらしい。

おじさんは大企業の重役。
その事もあってか、自分の身内が蒸発し、その娘が自分に預けられていることがひどく気に入らなかったそうだ。


世間体を気にして、カズミの事を内密にしていたらしい。