「美羽。こっちだよ!」
「分かってる。」
優希が何回も声をかける。そんなに心配なのか。私はそんなに弱くない。
「優希、うるさい。」
和希が優希にそう言った。和希の言葉が効いたのか静かになった。黙って縦に並んで歩く3人。そこから電車に乗っ
た。向かい合わせの席に和希と優希が並んでその向かいの窓側に私。
「どこに行くの?」
「南。」
私は住んでいた街以外の記憶がない。いや、住んでいた街さえも曖昧な記憶しかない。ただ、気付いたらあの街に居て、気付いたら追われていた。理由も分からない。
(南には何があるのかな。)
ゴトゴト。。。
電車に揺られる音が懐かしく心地よい。
ゴトゴト。。。
(そういえば私の記憶は何でこんなに曖昧なんだろう。)
ゴトゴト。。。
(電車も初めてだ。電車どころかきっと車や船、飛行機も無い。)
ゴトゴト。。。
(???何かおかしい。何か違和感がある。)
ゴトゴト。。。
(眠いな。)
覚えていたのはそこまで。その後は寝ていた。
「美羽。降りるぞ。」
「うん。。。あ、寝てた。うん。」
我ながら変な事を言ってしまったが、取り合えず電車から降りた。
「どこ?」
「えっと、南リア島。知ってる?」
「知らない。」
南リア島どころか私の住んでいた街の名前さえ分からないのに。
「こっちに。宿がある。そこに泊まるぞ。」
和希がそう言ってさっさと歩いてく。その後ろに優希がついて行き、さらにその後ろから私が付いていく。
「ここ。宿泊費、1泊1部屋1000円。お金の方は俺たちで何とかするから。」
「ありがとう。自分の物は自分で出すわ。」
「そうか。分かった。」
宿の部屋に入って役割について少し話した。
私は主に家の事。ご飯、掃除、洗濯など。掃除と洗濯は2,3日に1回でいいらしい。和希と優希は夕方6時から10時まで働くらしい。だいたいどんな仕事か想像はつく。私はいつ働こうか。色々話していたらもう6時ちょっと前。
「じゃあ行ってくる。」
「なるべく早く帰るね。」
「分かった。」
和希と優希が家を出てしばらくして、宿のドアが叩かれた。