「義一様。タクシーが着かれました」
ふすまの奥、廊下で頭を下げてる薄紫の作務衣を着た少女が声をかけてきた。
「…ご苦労」
義一の口調が硬くなったのを、俺は見逃さなかった。
と、同時に、微かに漏れた、声。
かすれた声らしきものが俺をとどまらせた。
その子を良く視る。
聴く、聴く、聴く。
『・・・ァィ・・・デ・・・』
聴き取りづらい、でも、この子からだ。
「一葉?花枝(ハナエ)がどうかしたか?」
義一が俺の様子を不審がり、俺の手首を掴んだ。
『・・ォ・・ァ・・ナ・・・イデ・・・』
オアナイデ?
なんの事だ。
「………義一、人払いしてくれないか?」
静かに言った。
「…あの、タクシーが」
俺に見つめられた、少女が怯えた声で言っていたが…
「一葉、なにかあるんだな?オイ‼︎ タクシーに待たせておくよう言ってこい。そして俺の許可なく誰もここに近づけさせるな‼︎」
先程俺を監視していた女性に言い付けた義一は、未だに俺の手首を掴んでいる事に気付いてもいないようだ。
