正しい『玉の輿』の乗り方


私達の残りの連休は、軽井沢にある会社の保養所で、のんびりと過ごすことになった。

「ホントにここで良かったのか? せっかくの連休だし、もっといいところに連れていってやったのに」

不安げに問いかけてきた樹さんに私は笑顔で返す。

「ううん、いいの。せっかくこんな素敵な場所に保養所があるのに、使わなかったら勿体ないよ」

私は窓を開けて、自然の空気を味合うようにして吸いこんだ。

「勿体ないか…。菜子はお金の心配がなくなっても、そこは徹底してブレないのな」

樹さんは私の頭を撫でながらクスリと笑った。

確かに今の私にはお金の心配なんて何もない。私の奨学金も父の工場の借金も全て樹さんが支払ってくれたし、何より半年後には副社長夫人という『玉の輿』が待っている。

けれど、『勿体ない精神』だけは未だに抜けきれず、こうして時々出てしまうのだ。

将来会社のトップに立つような人に、あまりみっともない真似をさせてはいけないと、ちゃんと頭では理解しているつもりなのだけど。

「そういえば、この敷地の裏にドクタミの葉がいっぱい生えてたぞ」

「えっ? そうなの!?」

「帰りに摘んで帰るか?」

「うん、もちろん! 樹さんも手伝ってね」
 
「はいはい」

と、それでも樹さんは、嫌な顔ひとつせずにこうして私に付き合ってくれている。