正しい『玉の輿』の乗り方


「あ…ってことは。え、うそ……まさかソファーで!?」

それはそれで大問題だ!
口に手を当てながら目を大きく開くと、樹さんは「なんでそうなる」と苦笑いを浮かべた。

「彼女とはそういうことをしていない。マンションには何度か来たけど、式の打ち合わせだけして、毎回すぐに帰してたから」

樹さんはコロンと私の横に寝転んだ。

「ううん。そんなはずないよ。だって、私が樹さんに電話した時、彩乃さんが出て言ってたもん。樹さんはシャワー中だって」

聞かないでおこうと思ってたけど、このままじゃいつまでも問題を解決できないと思ったから。

私はドキドキしながら樹さんの言葉を待った。

「シャワー? ああ、そう言えば彼女にコーヒーをこぼされてシャワーを浴びたことがあったな。そっか。あの時、菜子は電話くれてたのか。履歴は消されてたけど」

樹さんはひとり納得したように頷いた。

なるほど。
彩乃さんは、私が誤解するようにワザとあんな言い方をしたのか。

なんだ、そっか。
誤解が解けてホッと胸を撫で下ろした瞬間、また余計なことを思い出してしまった。

「……でも。この家ではシてなくてもホテルではシたんでしょ? 私をパーティーに連れて行ってくれた夜、彩乃さんとホテルに泊まったんだから」

こんなことを聞いても仕方ないって分かってるのに。
口が勝手に動いてしまう。

「ああ。あの時か。確かに彼女の機嫌を取るために泊まったな。あの夜、彼女から抱いてくれってせがまれて、婚約者としては抱かない訳にもいか」

「待って! やっぱり言わなくていい。聞きたくない」

私は耳を塞いだ。
自分で訊いたくせに、受け止める覚悟はできていなかった。

「おまえ、自分で訊いたんだから最後までちゃんと聞けよ。これじゃ、後味悪すぎるだろ」

「だ、だって」

唇をギュッと噛み締めると、樹さんが私の頬に手を触れて、ふっと笑った。

「手なんか出してないから安心しろよ」

「え……?」

「抱かなきゃいけないのは分かってたけど、絶対勃たないと思って断ったんだよ。『お義父さんから式までは手を出すなって言われてる』って嘘ついて」

「ほんと!? じゃあ、彩乃さんとは本当に何もないの?」

「ないよ。俺は好きな女しか抱けないからな」

樹さんは私を優しく抱き寄せた。

「樹さん」

「ん?」

「私………このベッドでシしてみたい」

恥ずかしさを堪えて口にすると、「何を?」と意地悪く返された。

「何をって!」

「ハハ。うそだよ。…………では、仰せのままに」
 
樹さんはそう言って、私にそっと口づけた。

「けど、覚悟しとけよ? 今までのツケ……結構たまってるからな?」

顔を上げてニヤリと笑う樹さん。

「えっ。やっぱり前言撤回。また今度でいいです」

「ダーメ。逃がす訳ないだろ?」

Sっ気たっぷりの樹さんに身震いしながら、熱くて甘いキスを受け入れたのだった。