「酷い。人が真剣に悩んでるのに」
恨めしげに夕夏を睨んだ時だった。
突然、ガチャと寝室のドアが開けられた。
えっ!泥棒!?
咄嗟に身構えた私とは対象的に、夕夏は笑顔でドアの方に振り返った。
「ただのヤキモチだったみたいですよ。良かったですね」
そんな夕夏の言葉に、「ありがとう」と答えた人物は今朝出かけて行ったはずの樹さんだった。
「うそ……いつ帰って来たの!?」
「いや。出かけた振りして、ずっと書斎で仕事してたから」
「な、なんでそんなこと」
訳が分からずにポカンとしていると、樹さんがズカズカと私の方へと歩いてきた。
「そんなの。菜子の本心を知りたかったからに決まってるだろ? 夕夏ちゃんに頼んで、どうして俺を拒むのかを聞き出してもらったんだよ」
「えっ! じゃあ、今の話」
動揺する私に向かって、樹さんは満足そうに頷いた。
「あの…そろそろ、私は失礼してもよろしいでしょうか?」
夕夏が樹さんに向かって声をかけた。
「ああ、悪かったね、夕夏ちゃん。すごく助かったよ。約束の件は好きに進めていいからね」
「ほんとですか!? ありがとうございます。それじゃ、菜子。また今度ね」
ご機嫌で帰って行った夕夏。
パタンと扉が閉まると、樹さんが私を強い力で抱きよせた。
「まったく、菜子は………」
盛大にため息をつかれた。
寝室を別にした理由がくだらなすぎて呆れているのだろうか。
ジワリと涙が込み上げる。
「そんなこと言ったって………嫌なものは嫌だよ。彩乃さんを抱いたベッドなんて」
声を震わせてそう言うと、樹さんは私の体を両手でふわっと抱き上げて、ベッドの上にボスンと落とした。
そして、自分もベッドに膝を付いて、私を組み敷きながらこう言った。
「あのな、菜子。もしこのベッドで他の女とこういうことをしてたなら、俺はこのベッドをちゃんと処分してる」
「え?」
私はキョトンとしながら言葉の意味を考えた。



