「ちょ、ちょっと! 失礼じゃないですか!」

お嬢様じゃないと分かった途端、この言われよう。
なんだか腹が立ってきた。

「そもそも、あなたが間違えたんですからね! こんなことになって、こっちだって迷惑してるんです。どう責任取ってくれるんですか!」

「そっちがフルネームさえちゃんと名乗ってくれてれば、こんなことにならずに済んだんだよ! それに俺の方はちゃんと名刺を渡してるだろ?」

「でも、顔が違うんだから気づきなさいよ!」

「それはこっちのセリフだよ! とにかくな、こっちは会社の将来にかかわる大事な縁談だったんだよ!」

「こっちだって『玉の輿』のかかった大事なお見合いだったんだから!」

「……………」

「……………」

お互い向き合ったまましばらく睨み合う。

「まあ、あんたとここで言い合ってても時間の無駄だな。俺は今から先方に謝ってくる。あんたもそうしろよ」

彼はそんな言葉を残して帰って行った。