「それより、何食べたい? 考えてたのは、松坂牛が専門の鉄板焼きの店なんだけど」

「あ~魅力的ですけど、めちゃめちゃ高そうですね」

「まあ、気にするな。ほら、菜子って普段肉に飢えてるだろ? 食べさせておかないと今度のパティーで俺が不安なんだよ。おまえガツガツ食いそうでさ」

「はあ? 大丈夫ですよ! 失礼な」

「まあ、いいから。いくぞ」

「いえ。もしよかったら、うちですき焼きとかどうですか?」

「は? 何で!?」

樹さんが驚いた声を出す。

「家ですき焼きなら半分以下の値段ですみますし、十分おいしいお肉が食べられますから」

「いや、あのな」

「それに樹さんだって今大変な時じゃないですか」

「え?」

ちょうど赤信号になり車が停車する。
樹さんは眉をひそめて私の方を見た。