「……なんていう噂を流した輩がいるよ」
わたしはその日学生たちから聞いたオカルトチックな噂話をありのままに話した。
彼女たちはわたしがその図書室の悪魔なる人物と親しい間柄にあることを知らないので、理系の教授職らしくやんわりと否定しておいた。
彼女たちは決して噂を真に受けているわけではないのだろうが、怖い話というのは否定説を提唱されることでより面白味がますもので、今回はわたしがその役を仰せつかったらしい。
きゃあきゃあと騒ぎ立てる女学生たちは、しかしわたしの話に耳を傾けようともしなかった。
まあ、それはこの男も同じであるが。
「それを話して、僕にどうしろと?」
「いやぁ、君のように俗世間から足を洗った身としても一応世間体は気にするかなと、お耳にお入れしておいただけですよ」
「興味がね、わかないなぁ」
ふあ、と大きな欠伸をして、梟谷双平はソファの上でごろりと寝返りを打った。
