「……」


だから私はあえて伊織にマネをお願いする事で、
いつ何が起きても一番近くで守れるようにした。


しかしそれは結果的に伊月先輩とも近い距離に
なってしまうというリスクも背負ってしまった。


でも……、学校の中なら安全だとも
思い込んでいたんだ。


なのに………、


「彼女…、今の撮影、この辺りみたい
なんですよね」


私は、伊月先輩の背中を眺めながら、
そう言った。


すると、佐藤先輩はブレザーのポケットに
手を入れながら、「そう」とだけ応えた。


あたかも相槌を打ったように見せていてもきっと
佐藤先輩にはその意味が痛いほど分かるだろう。


厳重に、そして慎重に、“彼女”の怒りを買わないよう、伊月先輩を誰からにも近づけさせないようにしないといけない。


それが私たちの大事な人を守る事であり、
唯一の方法なんだ。


だから……、


ごめんね、伊織。



あなたにこの場所は来させない──。