「集合──!」
体育館の扉が開き、鈍い音を立てる。
誰だ誰だと思えば、理沙は彼の元に
集合をかけた。
私も真似する様に小走りで彼を囲み見れば、そこに居たのは昔もよく知る人物だった。
「佐々木先生!」
そう言えば、佐々木さんも私に
気づいた。
「雨寺、お前なんでここに?」
「先生こそ」
「こそ…って、俺はバスケの顧問だから
なあ、そりゃ居るだろ」
そ、そうだったんだ…。
確かに、彼は中高時代、お兄と一緒に
バスケをしていた事を思い出した。
お兄は途中で退部してしまったけど、
佐々木さんは最後まで続けてたって、
お兄が昔話してくれてたな。
そう考えれば顧問と言われても不思議ではないし
むしろ相応しいだろう。
1人頷き納得している私を横目に、
理沙は応えた。
「伊織が少しの間マネの手伝い
してくれるんですよ〜」
そう言えば、佐々木さんは一瞬瞳を
大きくし、驚いていた。
「へえ、雨寺が…珍しいな」
「そう…ですか?」
心底意外だったのか、ふーん、へえ、
と、声を漏らし凝視される。
まあ、言われた本人でさえ分からなくも
ないけど、福岡にいた頃は今より
人見知りだったのだ。
だからこういう場に私が出てきた事が、
佐々木さんは信じられないのだろう。
私はぎこちなくニコリと笑えば、佐々木さんは心配そうに薄笑いし、私の頭をぽんぽんと軽く撫でた。
「まあ、頑張れよ、よろしくな」
そう言って、今度はニカリと
笑ってくれた。
……っ
いつまでたっても、私はこの人の
目が好きだと思った。
「はい!」
私は大きく返事をした。
…佐々木さんが顧問でよかったばい。
大人になっても、しっかり昔と変わらないものを持っている先生に、私は言葉にならない安心感に満たされた。
