今になってハッとし、私は伊月先輩が背を向け歩く姿を思い出しながら、理沙の背中がだんだん離れていくのをただ見つめていた。


そして、彼女の後ろ姿が先輩と
重なって、気づいたんだ。


どんなに仲が良くても、優しい人でも、触れてはいけないことがあり、それは誰もが持っているもの。


現に私だってそうじゃないか。


「……」


私にはまだ彼らの事情は知らないし、
無関係であって、そしてそれが今私が
置かれている場所。


それを私は段階の手順を間違え
無理に入り込んでしまった。


だから、要するに、


私がそれを知るにはまだ築きあげてきた
ものがなくて、理沙にはあるんだ。



…それでも、


先輩はともかく、理沙はいつも一緒にいるから、
なんでも分かると思い込んでいた。


でも、私は彼女が誰かに対し心を乱したり、
あんなに動揺する姿を初めてみたんだ。


いつも隣の、同じ歩幅を歩いている
と思っていたのに…。


でも本当は、全然……、



私は同じ場所にはいなかったんだ───。