「だれ?」


いつものように、公園の砂場で遊んでいた私に、
1人の少年が私に問う。


栗色の髪に大きな瞳をした彼に私は見覚えが無く、首をかしげ私もまた、そう問い返した。


「俺は立花(たちばな)……、」


「立花 柊!!」


彼は元気よく応え、私と同じ目線で
しゃがむと、にこりと笑った。


「立花……柊…」


太陽みたいな人だと思った。


「きれい…」


「え?」


「笑った顔!」


幼児というものは、思った事を簡単に口に出してしまうもので、私はパッと表情を綻ばせそう応えていた。


自分に話しかけてくる人が珍しかったのか、それとも彼の朗らかな性格のせいか、仲良くなるのに時間はかからなかった。





柊の地元は元々東京で、少しの間福岡に家族で
遊びに来たのだという。


今思えば、夏休みでもない5月下旬のこんな時期に福岡に遊びに来るのに違和感を感じるが、その時はそんな事みじんも思わなかった。


「どうして近くに海があるのに、
いつもこの公園で遊んでるの?」


いつものように公園の砂場で遊んでいた私たち
だったが、柊は退屈そうに問いた。


「お父さんが、1人で海の方行くんは
危ないき、やめときいって」


私はそう言いながら、初めてこの時彼は私に
付き合わせれていたのだと思った。