小さく、そして短く音が響き渡る。


「むかつく」


真衣は乱れた髪を直し、それだけ言い残すと、
俺を追い越し立ち去ってしまったのだった。


まだ少しジンとした頬の痛みが俺に
言った。


本当にお前は堪え性がないと。


「───ッ」


俺はグッと唇を噛み締め
首に手を当て深く反省した。


「けほ…」


熱があるくせに真衣にそれを移させて
どうする気だよ。


仕返しのつもりかよ…、
そうじゃねぇだろ、俺。


「本当ださ……」


1人ボソリとそう呟けば、俺は
空を見上げた。


中途半端な薄暗さに、街灯の色が混じる。


ああ───、


いつからこんな風になったんだろう。


本当は友達思いの優しい子で、俺とも仲良くして
くれる、人懐こい元気な子だった。


なのに……、


「……」


今真衣がこうなってしまった事は俺の責任であり、まだ彼女の側にいるはは、それが俺の償い。


そうする事が正しいのかは
分からない。


でも、そうする事が真衣の願いなら、
俺は叶えてあげたい。


それがたとえ不毛な関係だとしても、
そんな理屈を、俺はすべきだと思う。


でも……、


その度に渇いて渇いて、ついには空っぽに
なるんじゃないかって、時々思う。


きっとそう言ったら、晶たちに
事業自得だって飽きられるかな。


「はは…」


本当俺……、


「なに偽善者ぶってんだよ」