よく家に遊びに来ては何かと、「真尋の妹」としてからかわれたものだ。


優しいお兄とは違って、少し意地悪な
佐々木さんは、もう1人の兄のようだった。


「でも、高3になって引越したとは聞いてたけど、まさか東京の、しかも先生やってたなんて知らんかったとよ」


「いやー、俺も教師になって伊織ちゃんの担任
持つとは思っとらんかった」


「本当だね〜」と、そうこう会話をしている内に、時間はどんどん狭まれている事に気付いた。


「やべ、3分過ぎてる、まぁその内
真尋にも会いに行くわ!じゃあ!」


そう言い残せば、先生は早々と
教室を出て行ってしまった。


先生は都会に来てから私たちより1年しか
違はないけど、ずいぶん標準語慣れしていた。


いわゆるビジネスとプライベートで
使い分けているのだろう。


私はまだまだ慣れないから、家でも
標準語を使っているのはお兄も同じだった。


少しでも慣れとかないとね。


「さてと、」


私は目線を下げ、プリントを見ると、
お弁当を持って教室を後にした。