「それじゃあ…いってくるよ」
『ええ。気を付けてね、坊や』
「…本当にありがとう。僕を拾ってくれて。
そしてここまで育ててくれてありがとう。
はは、ありがとうしか出てこないや…」
『あなたは…ほんとばかね。気まぐれって言ったじゃない』
「それでも僕は幸せだったよ。
支えてくれるひとがいるってすごく幸せなんだって今更思ってる」
『…ねえ坊や。これからも坊やはひとりじゃない。私がいる、ジルくんという大切な友達もいるわ。
私とはもう会わないかもしれないけど、でも思い出して。
坊やには一緒に過ごした人、そしてこれから一緒に過ごしてく人がいるってことを』
「うん…。」
『辛いことがあったらいつでもこの家に戻ってきなさい。
思い出が詰まったこの家なら…ひとりで泣くことだって許されると思うの』
「うん…。
なあ、最後に名前を教えてよ」
『ふふ、20年も一緒に過ごしたのに言ったことなかったのね。
私はフレイヤ。フレイヤ・メイガス』
「メイガス…。そうか、僕の名前は母さんから…。はは。
…さようなら。母さん」
『ええ。さようなら、坊や』