悪友の板橋旬に誘われて、仕方なく付き合いで行ったキャバクラ。

 旬は、ナナミという女がお気に入りのようだ。
よく店に足を運び、指名する。

 旬と俺のテーブルにナナミと桃子がついた。

 旬はナナミにデレデレになり、隣に座って貰えるだけで満足するような可愛い奴。

 ナナミという女は、そんな男心をくすぐるのに長けた女だ。

 髪の毛は、デジタルパーマを綺麗にかけてフランス人形張りのカール。
モデルを意識したような化粧。
長い付け睫にピンクのルージュを塗り、甘えた声で話す。

 「旬ちゃん会いたかったよ〜ん」

 『ちょろいな〜
また来てくれたよ。
有り難いね〜
好みじゃないけど、
こういう客、だ〜い好き!
今日もしっかり飲んで行ってよ!
ボトルは空けてよね!

 あら、ツレはイケメンじゃん!!
長身だし、サラサラ黒髪にメガネで知的な感じ。
着ているスーツもセンスいい!!
まるで、絵に描いた様なインテリイケメンじゃな〜い!

 惜しいな〜 
イケメンの方が通ってくれたらいいのに………

 まぁいいや!?
イケメンじゃないけど、人のいい旬ちゃんを上手く掌に乗せて………』


 旬………
ご愁傷さま。
君の好きになる女は何故か性格が悪い。
その分、君はピュアだ。
いい奴なのにな…………
カモにされちゃってんだな。



 そう、俺。
人間の裏側の声が聞こえちゃう、厄介な人。