玲奈は家に帰る途中も帰り着いてからも、今日起こったことを考えていた。スコットはただの生徒。でも、会えるとうれしい。特別何かをしたいという思いはないのだが、話しかけらることを想像するだけでとてもうれしくなる。先輩教授のクリスティが言ったことを思い出した。そして玲奈は、やっぱり気を付けないと、と思った。

 そして、ブライアンのこともたまに彼のことをちらっと見ながら考えていた。あのキスはなんだったんだろう。玲奈は昔、思いあがって勘違いをして、傷ついたことがある。それ以来、だれもこんな私に興味はもたない、あるいは、ちょっと変わり者だけが興味を持ってくれる、と考えることにしている。

 「レイナ、水飲む?」

 「うん、お願い。今日はありがとう。すごく楽しかった。」そういうと玲奈はソファにほぼ横になるような姿勢になって、気が抜けてしまい動けなくなってしまった。単純に体が疲れていたのと、何度もスコットの顔を思い浮かべて何をする気にもならなくなってしまったのとその両方だった。

 「はい、水。」

 「ありがとう。」水を一口飲むと、喉を通って胃に行きわたるのがはっきり感じ取れた。

 「ねぇ、レイナ、これからいろんな所に一緒に行こうよ。一緒に時間を過ごしたいんだ。」

 「もちろん連れてってよ!まだカナダに来て少ししか経っていないし、いろんなこと知りたい。」

 「レイナ...キスしていい?」

 ブライアンは玲奈の返事を待つ前に、ソファに座っている、というより横になっている玲奈に近づきキスをした。玲奈は何も考えることができなかった。胸が熱くなるのだけはわかった。なんだか、溶けて自分がなくなりそうだった。

 「友達、として、ね。」

 「うん。」

 「おやすみ。」

 玲奈はベッドに向かって目を閉じたが、しばらく何を考えるでもなく、それとも何かを考えすぎてか目がさえてしまいベッドに横になって時間が過ぎるのを待った。