今日の朝は特に天気がよかった。いつもより早く目が覚めた。カーテンを開けると、日が差し込んできて、玲奈はいよいよか、と少し緊張しながら起き上がり階段を下りた。

　いつものように玲奈の母がおはよう、と台所で忙しそうにしながら玲奈に声をかけた。

　「おはよう。」玲奈もいつものように言ったつもりだったが、どこか緊張した、少しよそよそしいような言い方になってしまった。

　祖父と祖母もテーブルにやってきた。「おはよう。」と声をかけてくれた。

　玲奈の祖父と祖母はいつも優しい。彼女がどんなに意地悪でイライラしていて最悪な気分で接するときも、何も言わず、いつも優しかった。玲奈の態度がどうであれ、いつもにこにこ笑顔を絶やさなかった。

　玲奈はいつも、「自分にはそんなことできない。」と思っていた。誰かに冷たくされたり意地悪なことをされたりすると、絶対にその人に対して優しく接するなんてできなかった。

　いつも後悔するものの、どうしても人に優しくできないことが多くあった。そんな性格が嫌いだった。

　しかし状況がどのようであれ、今日はカナダのバンクーバーに飛ぶ日だった。

　日本語教師として働くため、日本を離れる日だったのだ。

　カナダに行く前に色々計画を練っているときはワクワクして早く行きたくて仕方なかったが、いざこの日を迎えると、なんとなく気分が暗くなった。