あるセンセイのバンクーバー物語

 放課後、玲奈はまたスコットに話しかけられ、授業中にできなかった質問について教えてほしいと言われた。いつも使っている日本語の教室で会うことにした。

 「先生、忙しいのにごめんね。さっき先生が違うやつのとこに行っちゃったから。」

 「それはあなたがあんなメモを見せるからでしょ!授業、聞いてた?」

 「もちろん。」

 「じゃあ質問ってなに?」

 「これだよ。やっぱり日本語のネイティブみたいに日本語が使えるようになるには時間がかかるってことかな。」

 「これは確かに微妙なところよね。私たちだって間違って使っているかもしれない。」

 こんなふうに、学生と日本語について話をするのが玲奈の夢だった。語学の話をするのってほんとうに楽しい。やっぱり日本語、英語、語学が好きなんだと改めて感じた。

 「先生、英語の質問は何かないの?」

 「うーん...すぐには思いつかないけど、でも今度文法の本を持ってくるから、質問するかも。」

 「待ってるよ。じゃあ今夜、クラブで。」

 「え?本当に行くの?」

 「うん、友達がそのクラブでいいって言うなら。」

 「そう。」

 「うそ。絶対行くよ。」

 玲奈はスコットに振り回されている気がした。彼は何もしていないふりをしているが、完全に自分の感情がスコットの思い通りになっている気がした。もっとも、彼が実際どのように思っているのかは知らないが。