あるセンセイのバンクーバー物語

 隣の生徒へと移った玲奈をスコットは見た。触れたい。キスしたい。そんな感情が頭をぐるぐるまわっていたが、なんとか授業に集中しようとしていた。彼女の何が特別かって、もしかしたら他のやつからしたら普通のアジア人女性なのかもしれない。だけど、あのきらきらした目、程よく細くほどよく筋肉のついた足、触りたくなるような腕。スコットにとってはとても魅力的だった。

 授業が終わってから玲奈に声をかけた。

 「スコット、何あれ?」

 「なにって、食事にでもどう?ってことですよ。金曜は何か予定があるんですか?」

 「うれしいけど、予定があるの。ルームメートと食事して、そのあとクラブに行くんだって。それに。あなたは私の生徒。ほかの先生とも食事とか行くの?」

 「まさか。行かないよ。でもご飯を食べるくらい、ダメなの?」

 「クリスティにそれとなく聞いておく。」

 「ねぇ、クラブってどこのクラブ?」

 「え?レイっていうクラブなんだって。私はもちろん行ったことがないけど。人気なの?」

 「そうだね、若者に人気だよ。」

 「え?若者?」

 「先生だって若者だろ?20..3歳?」

 玲奈は笑った。
 
 「それ本気で言ってないよね?」

 「女性に歳は聞いちゃいけないもんなんだろうけど。」

 「まぁいいや。私は26歳。たまに35歳に見えるって言われるの。」

 「35歳?!それはないね。すごくきれいだよ。」

 「..え?」

 「あ、いやぁ..。」

 「まぁアジア人は白人より若く見えるのかな。悪く言うと子どもっぽいってことね。」

 「そんなことは言ってないよ。レイナ先生は若くてかわいくてきれいだね、って言ってるだけで。」

 「そんなこと言ったって、Aをつけてあげるわけにはいかないの。自分でちゃんと勉強してAをとってね。」

 「別に成績がほしいからじゃないって。じゃあ俺もレイに友達と行こうかな。そこで会えるといいけど。」

 「ちゃんと勉強するんだよ。」

 そう言って玲奈はスコットと別れた。