あるセンセイのバンクーバー物語

 クリスティの授業に入って学生たちが日本語を答えるのを手伝ったり、机間指導をしたりした玲奈は、自分だけのクラスを持ったときのことを想像した。学生が楽しくなるような授業をしたい、学生を引き付けたい、と思った。

 そんな想像をしていたとき、スコットと目が合った。彼はにっこり笑った。しかし玲奈はなぜか緊張してしまって、スコットと目を合わせることだけで精一杯だった。女性らしく微笑み返すこともできなかった。

 「先生。」スコットが玲奈を呼んだ。

 「どうしたの?どこか質問でもある?」

 スコットはノートの端をペンの先で指した。“金曜の夜、夕食に行かない?”

 玲奈は自分の目を疑った。なに、これ。何が起こっているの?

 玲奈はスコットと目を合わせたが、何も言わずに隣の生徒へと移っていった。

 胸がドキドキした。

 なんなの、これ。