あるセンセイのバンクーバー物語

 「ねぇ、さっきの話だけど、レストランに行ったあと、クラブに行かない?そういうところ、好き?」

 「クラブは大好き。バンクーバーではクラブではたばこはダメなんでしょ?本当にうれしい。日本では吸っても大丈夫なの。クラブで踊ることは好きなんだけど、たばこの煙に耐えられないことがよくある。」

 「そうなんだ。じゃあこっちでは思いっきり楽しめるね。俺がいつも行ってるレイっていうクラブに行こうよ。君の名前にも似てる。」

 「うんわかった。すごく楽しみ。」

 玲奈には今のところすべてが順調にいっているように思えた。でも、これはいつものことだ。最初は順調そうな滑り出し、でもいざ仕事をしてみたり新しいことをするとうまくできず、できない新人だ、といつも思われていると玲奈は思っている。そして周りとの関係が少しずつギクシャクし始め、やっぱりこれは自分には向いていない、新しいことをやってみるときなのかも、となってしまうのだった。

 今回もきっとこのケースだろうと思った。何か新しいことを始めるときに、これ以外のケースになったことはないのだ。「そりゃあ何かを始めたらうまくいかないことだってあるさ。普通のことだよ。」と言う人もいると思うが、玲奈の場合、それではおさまらない、もっと深刻な状況に陥るのが彼女の人生のようだ。

 とりあえず、クラブで踊っているときだけは忘れられるかな、と考えながらベッドへとむかった。