あるセンセイのバンクーバー物語

 家に帰って夕食を作り、そうこうしているうちにブライアンとソユンが帰ってきた。

 「レイナ、今度私が働いてるレストランに来てよ!サービスするから。」

 「ほんと?!もちろん行く。ね、ブライアン。」

 「じゃあ今週の金曜、どう?」

 「オッケー、店長にも紹介するね。おいしいから絶対気に入るから!」

 「ありがとう、金曜が楽しみ。」

 玲奈はコーヒーをいれた。日本から持ってきたインスタントコーヒーだ。お湯を沸かし、注ぐだけ。とにかく面倒なことは避けたい玲奈にはピッタリだった。

 「コーヒー、好きなの?」ブライアンが聞く。

 「大好き。毎日飲んでる。ラテが好きでラテアートだってできるようになりたいけど、コーヒーメーカーがないし、今はこれで十分。」

 家でコーヒーを飲んで何も考えずに過ごす時間が玲奈は好きだった。コーヒーは喉を潤す飲み物でもないが、なぜかコーヒーがないと落ち着かない。コーヒーがいったい自分の体に何をしているかは知らないが、とにかくコーヒーを片手に持っているときだけは落ち着く、と玲奈はいつも思った。

 そして、ナルシスト的な考え方だろうが、コーヒーを飲んでいる自分だけは好きになれた。何も考えていないし、誰のことも傷つけていないからだ。