『そういやお前。小学二年の頃、俺のこと露骨に避けてたよな。覚えてっぞ』
「いや、あれは春樹が友達と遊んでたからで」
『別に、朝陽が誘ってくれりゃ他の奴らの誘いは断ったっつーの。ほら、公園でキャッチボールした時、あん時は朝陽が誘ってくれたじゃん』
「……そうだったっけ」
『忘れたとは言わせねーぞ』

 正直そんなことなど忘れてしまっていたため、朝陽は曖昧に苦笑する。

『あ、そういえば公園といえば』

 話がどんどん違う方向へと飛んでいく。春樹は昔から、話の筋道を立てずに、思いついた事柄を次々話題に上げていくタイプの人間だった。

『あの公園、今はもう更地になってるんだよ』
「あぁ、そうなんだ……それはなんか、寂しいね」

 いつのまにか気付かないうちに、懐かしい思い出は次々と形を失っていく。しかし、朝陽はもう知っていた。

 懐かしく、寂しいと思えるのは、昔あの場所で無邪気に遊んでいたからであり、あの場所がなくなったとしても、その気持ちまでなくなったりはしない。目には見えないものが、心の中に残り続けるのだから。

『実はその更地もなくなる予定だったんだよ。前にそこで工事やってたんだけど、なんか途中で中止になったらしいぜ』
「ということは、まだあの場所自体はなくなってないんだ」
『まあ、そういうことになるな。あと、それとさー』
「春樹、さっきから話題変わりすぎじゃない?」
『悪い悪い、昔からこうなんだよ』