___6月20日月曜日。

お前は、俺の前から姿を消した。

「ごめん!今日遅くなるから先帰ってて!」

思えば1週間前から様子がおかしかった。
先に帰ってて、今日お昼一緒に食べれない。
最近はいつもこうだった。

「おう。」
「もしかして寂しい?」
「なわけねぇだろ…。ガキじゃねぇんだから。じゃあまた明日な。」
「うん!」

校門前でお前はでかい声で俺の名前よく呼んでたよな。
「レオ!ばいばーい!」って。
恥ずいのもあったけどそれも嬉しかった。
片手挙げて手を振ると犬みたいに喜んでジャンプをするお前は時々ウザかったりもした。
けど、そんなことを思ってられるのは幸せな証拠だと気づいた。

「レオ!」
「んだよ…。」

ノックもなしに入ってきた母親に怒鳴ろうとすると今はそんなことを言ってられる状況じゃないとなんとなく察した。
普段ならノックもせずに入ってくる時は俺がなにかやった時。
けど、今日の母親の顔はいつもと違った。

「おい。顔色悪いんだから寝と…」
「舞ちゃんがっ…!」

涙をウザったいほどボロボロ流して俺の服を掴んできた母親の様子は明らかにおかしかった。

「…舞…?舞がなんかあったのかよ…!?」

肩を掴んで「おい!」と怒鳴った。

「さっき、亡くなったって…」

ゆっくり口を開いた母親から出た言葉は俺の怒りに火をつけた。

「…ふ、ふざけてんじゃねぇよ!!ババア!!お前、ついにボケたんじゃねぇのかよ!!」
「私だって信じたくないわよ!!」

赤く腫れた目元をグッと力を入れて睨んだ母親は悔しがっているようにも見えた。
その目付きに俺は怯んだ。
信じたくないのは俺だって同じだ。
ガキの時から仲の良かったあいつが死ぬだなんて考えられねぇし、何より何も出来ない自分が悔しかった。

その数日後、舞の葬式が行われた。
学校は休み。
普段なら超ラッキーなんて言っちまう俺だが今日はそんなことを言える気分じゃなかった。
眠くなる坊さんの念仏。
うるさい泣き声。
黙る母親。
何もかもがムカついた。
あの時待ってなかった俺にもムカついた。
舞が死んだ原因は通り魔。
犯人はまだ捕まってない。
実際今すぐ殺したいところだ。

「レオ。」
「…んだよ。」
「何考えてるか知らないけど、舞ちゃんが悲しむようなことをするんじゃないわよ。」
「……っち…。分かってるよ。うるせぇな…。」

母親に隠し事したって無駄なもんだな。
俺以外に舞の仲良かった女友達。
それからもう1人の幼馴染の『ゆう』。
相変わらず女みてぇに長い髪は気持ち悪かった。
それでも黒のスーツが似合ってるが羨ましく思えた。