...お母様が亡くなったのはそれから3日後のことだった。

ちょうど外遊にでてたアシエ兄様とイリエ兄様が帰ってきた日で。

葬儀は留学中のカエラ兄様を除いて、その2日後に帰ってきたエヴァ兄様を待って行われた。


ユグノアの血族がまた一人いなくなってしまったと嘆く人もいたけれど、ほとんどの国民がお母様が亡くなったことに心を痛めていた。


皆が悲しみに涙を流す中、私はお母様との会話を思い出していた。


『夢は死ぬまで覚めない』

なら、お母様の夢は覚めたのだろうか。
目覚めた世界でお母様は幸せになれるのだろうか。


直前にお母様が私にあんな話をしたのは、自分の死期を悟っていたからなのか...私にはやっぱりわからないことばかりだった。


ただ、もうあんな風に優しく抱きしめられることはないと思ったら、涙は静かに流れた。


それを拭ってくれたのは、エヴァ兄様と一緒に国に寄ったトワだった。



「今しか泣けないのだから、泣けばいい。
母親を失うのは誰だって辛い。」

「私は..っ...」


お母様の生きた証になれるのだろうか。
ユグノア・ホーリス・ジグラードという一人の女性の生きた証明が私の存在でなされるのか...

お母様がそう思っているのなら、私は生きなければならない。
これから先、どんなに辛い未来が待っていようと。

大切なものを失うことになっても。


お母様と私が生きた証にならなければならいのだから。