いつかの夢の終わりに君が願う奇跡を





真っ直ぐに私の目を見るお母様の瞳は綺麗すぎて引き込まれそうなほどで、その目をそらすことはできなかった。


「...あなたにとって結婚は、きっと辛いものになる。それをどうにかする術が私にないことが悔しいわ。

けれどね、この先に待つ長い苦は全て夢なの。
その夢が醒める時、あなたはきっと誰よりも幸せになれるわ。
だから、どうか...今だけは我慢するのよ。」


「言っている、意味が...よく、分からないのですが...お母様、どうゆう...?」


「この国の女たちはね、この世界に生まれ落ちた瞬間にその運命が決まってしまう。それがどれだけ残酷なことなのか、男たちは分かっていない。
だからこの国に住む女は皆、生きている時間を夢だと思うの。
夢はいつか覚める時がくる。その時が私たちの本当に生きる世界を見せてくれると。
...そうゆう風に慰めないと生きていけないの。

ユノが自分の性をどうゆう風に思っているのかは分からないわ。それでも本当はユノには女に生まれたことを悔やんでほしくないの。」


「........」


「だけど、皇室を出れば嫌でも知ることになる。私たちはいつまで経っても鳥籠の中からは出られない。
だから覚えておくのよ。この国から出ない限り、私たちの夢は死ぬまで覚めないと。」


女に生まれたことを悔やんだことはない。
けれど、いつだってこの国をでたいと思ってた。

お母様の言葉は1つ1つが重く心に響く。
分かっていた事実を1つ、また1つと確認している感覚だった。


「お母様は、今まで幸せを感じてはこなかったのですか?
ダンタリア国王の妃になり、皇族の一員となったこと、私たちを産んだことは、お母様にとっては夢であってほしい出来事でしたか?」


だけど、どうても信じたくない。
お母様の生きてきた時間が全部夢であってほしかった時間なのか。
それはすなわち私たち兄弟の存在の否定だから。