いつかの夢の終わりに君が願う奇跡を




「エヴァが帰ってくるそうね。」

「えぇ。トワも一緒だと。」

「そう...彼らは今でも仲がよいのね。喜ばしいことです。」


喜ばしいと言うわりに、お母様の顔は暗い。
何かを思い出しているようなその表情は苦笑いにも見えた。


「エヴァは...とても優しく賢く育ってくれました。」

「エヴァ兄様は私の自慢の兄様です。」

「あなたは一番エヴァに懐いていたわね...。でも、そうねぇ...あなたが生まれたことを一番祝福してくれたのもエヴァだったわ。」



エヴァ兄様は昔から私によく構ってくれていた。
12離れた兄様は私が生まれてすぐに士官学校に入らなければならないことを酷く嘆いていたらしい。
そして16になり士官学校を首席で卒業してからは、4年分を埋めるように私に構ってくれたらしい。

私はほとんど覚えていないけれど。


他の兄様たちにも言われるくらい、エヴァ兄様は私を大切にしてくれた。



「兄様はどうしてそんなにも私を大切にしてくれるのでしょう?」

「私にもわかりません。初めての妹という存在がとてもまぶしかったのかもしれません。」

「...兄様は私の結婚を祝福してくれるでしょうか。」



「ユノ。」


ユグノアの清い血を引くお母様の紫の瞳に見つめられる。
この紫の目をつ継いでいるのもエヴァ兄様だけだ。

エヴァ兄様以外の兄たちは皆、その瞳はエメラルドのような碧に輝く。
誰よりもお母様の血を濃く受け継いだエヴァ兄様はその漆黒の髪だって美しい。
他の兄たちの髪の毛はみな、黄金に輝いているのに。


けれど、私は一人違う受け継ぎ方をした。
瞳は黄金で、髪の毛は漆黒。生まれた時は誰もが目を疑ったと言っていた。


それでもお父様やお母様、兄様たちは私を愛してくれていた。
誰とも変わらぬ愛情を注いでくれていたと思う。