太陽は高く上ってお城を照らす。
城下町は今日も賑わっているのに、お城の中は閑散としていた。

人が出払っているのは最近頻繁に起こるスラムの暴動をおさめる為で、城に残るのは争い事をしない使用人たちだけ。



「はぁ...」

高いお城の塔から城下町を見下ろす。

私もあんな生活がしてみたかった。
活気と笑顔に溢れて、色んな人達とお喋りしてみたかった。


...どんなに願ってもそれは叶わない。
このお城にいる限り。


願いは願うだけ叶わない失望をいっそう多く伴うだけと分かっていても、私は1人先に進めない。



「ユノ様、ランチの準備が整いました。広間へお越し下さい。」

「...ありがとう、ユエ。」

「今日も体調がよろしくないのですか?顔色がよろしくないです。」

「大丈夫よ。心配してくれてありがとう。
さっ、ランチを食べに行きましょう。」


メイドと言うのが正解なのか使用人の1人であるユエは私をいつも心配してくれる。
彼女は私より2歳年上だけど、私の身の回りの世話を全てしてくれてる。

申し訳ないような、自分が不甲斐ないような、どうしようもない感情に動かされながら、私は施しを受けるだけだ。


「ユノ様、エヴァ様からお手紙を預かっております。こちら、お受け取りください。」

「あら、エヴァ兄様からの手紙?ありがとう。」


軽めにと用意された昼食は、ハムとチーズとレタスとトマトのサンドイッチに温かいミネストローネ。
デザートに色とりどりのマカロンだった。


食べ終わった後、侍女長に白い封筒を渡される。
白い便箋に、浮くように鳥と葉の絵が書かれていた。