いつかの夢の終わりに君が願う奇跡を


「やっぱりユノには笑顔が似合う。

...っと、俺はまだ仕事が残っているんだ。あとは3人で楽しんでくれ。
また夕飯の時に。」

それだけ言うとエヴァ兄様は中庭を去ってしまった。

「ユーリは相変わらずだな。」

兄様の後ろ姿を見ながらトワが苦笑する。
エヴァ兄様はいつだって自分のペースを崩さない。

ある意味ではとても自由な人なのだと思う。


「さて、ユノも大分気分転換になっただろう。」

「...そうね。なんだか、とっても、穏やかな気持ちよ。」

お母様がいなくなったことは悲しいけれど、兄様に貰った花束や、トワに貰ったオキザリスのドライフラワーはなんだか優しく私に寄り添ってくれてる気がして。

悲しい気持ちは大分薄れている。
全部、トワが連れ出してくれたおかげだ。


「ユエ、このお花、そのまま部屋に飾れるかしら?」

「もちろんでございます。」

「お願いできる?」

「かしこまりました。」

花束をユエに預けて大きく息を吸う。

眩しいくらいの太陽に、雲ひとつない晴天。
お母様からの贈り物のような気がした。


「ユノ、さっき来月に結婚する、と言ったな。」

「えぇ...」

「ユノが望むのなら、本当は...いや、なんでもない。
ユノの花嫁姿はきっと綺麗だろうな。」

「トワ、......」

あなたにそんなこと言われたくなかった。


想いは言葉にならずに、涙となって頬を伝った。
言えない想いは残酷に胸を抉る。

いっそのこと言ってしまった方が楽になれるんじゃないの?

心の中の悪魔が囁く。

迷惑をかけたくない。関係を壊したくない。

矛盾した思いが叫んでる。


好きなのに、こんなにもトワが好きなのに。
どうして、私はあなたに気持ちを言うことすら出来ないなんて。