「エヴァ様はいつでも凛としておられて素敵ですね。」
「ユエもエヴァ兄様と結婚したかった?」
「いえ。エヴァ様には姉の方が似合っていると。
それに私にはユノ様がいますので。私はユノ様といられることが幸せでございます。」
「...ユエはいつも私に優しいわね。」
私はユエに何もしてあげられないのに。
ユエの姉であるユキさんがエヴァ兄様と結婚したのは6年前のこと。
私の結婚相手が決まり、結婚するならエヴァ兄様がいいと駄々をこねた直後だったのをよく覚えてる。
だから本当はユエは私の側にいる必要はない。
小さい頃から一緒に過ごしてきた。それは主人と侍従ではなく友達として。
きっと私とユエはエヴァ兄様とトワのようになれたかもしれなかった。
けど、そうはならなかった。
ユエは私の側で仕えることを選んだ。
「ユノ様、私はいつでもユノ様のお側に。私は優しくなどありません。ただ、ユノ様に笑っていてほしいのです。
それはエヴァ様が、トワ様が望むのと同じです。」
「こんな何もない私に...」
「ユノ!」
俯いた私にエヴァ兄様の声が飛んでくる。
「待たせたな。これをユノに。」
「えっ?」
エヴァ兄様が差し出したのは色とりどりの花の花束。
それはバラやガーベラみたいな分かりやすい花から名前も分からない花まで様々だった。
抱えないと持てないくらい大きな花を渡されてどうすればいいのか分からない。
「それから、これも。」
「これは?」
貰った花束をテーブルに置いてトワに差し出されたものを受けとる。
「簡単に言えばドライフラワーだ。それ、蓋が開くようになってるんだ。」
片手に収まる宝箱のようなガラスケースの蓋を開けてみる。
そこには机に飾られたオキザリスと同じ、オキザリスの花が可愛くあしらわれていた。
それに、ふわりと優しいフローラルのような匂いがする。
「ホーリス様のものを勝手に借りてしまったが、ドライフラワー、プリザープドフラワーとも言うんだがいいものだろ。」
「素敵ね...」
こんな風に花を乾燥させて、綺麗に飾る。
ガラスの宝箱も可愛い。
...世界にはまだこんなものもあるのだと、思わず笑みがこぼれる。


