いつかの夢の終わりに君が願う奇跡を




「この庭は色で溢れてる。色は幸せの象徴にもなる。」

「え?」

「...いや、なんでもない。」




「......」

「......」




しばらくの沈黙。

誰も、何も言わない。
私は何も言わずに中庭を見つめるトワの横顔を見ていた。



時々トワの髪を揺らす風は、私の黒い髪も一緒にさらっていく。
この世界は美しい...たくさんの色で溢れて、まだ見ぬ世界に恋い焦がれることは許されるのだろうか。

いつか、もっとたくさんの色に触れられる日が来るのか、私には分からないから。
このまま、いえ、少なくとも1カ月後に私は違う世界に飛び込むことになる。
そしたら変わるのかな、自由にはなれないけれど、触れられるものは増えるのかな。



「...トワ」

「なんだ?」

「私、来月に結婚するのよ。」

「...」

「何も知らないまま、また知らないところへ行くの。
お母様は言ったわ、夢は死ぬまで醒めないと。

...そうしたら、たくさんの色に溢れた世界は夢の覚めた世界でしか見られないのかもしれないわ。
それでも、「ユノ!!!」



それでもあなたが連れていってくれるのなら。
美しい世界をあなたが見せてくれるのなら。

きっと私はこの夢の中でも生きていけるはずなのに。
醒めない夢を幸せに見続けられるかもしれないのに。




あなたはそれを許してはくれない。






私の話を遮ったトワの表情は悲しそうに歪んでいた。
今までの私はどうやってトワと喋って笑っていたのだろう、それすらももう分からない。



「ユノ...俺は、」


「ユノ、トワ、それにユエも。ここにいたのか。」

「ユーリ...」

「エヴァ兄様。」


「ん?どうした。浮かない顔はユノには似合わない。
俺で良ければ話を聞くが?」

「いえ、なんでもないの。」


「母さんが亡くなって辛いのは分かるが、ユノには笑顔が似合う。なによりも俺がユノに笑っていて欲しい。

...そうだな、ちょっと待っていろ。トワ、お前はこい。」


「ちょっ、なんだ、ユーリ!」


腕をつかまれて、どこかへ行ってしまったトワ。
エヴァ兄様は一体何を...