「ユーリにとっての優先順位の何よりも上にいるのはユノだろう。」
「...そうかしら。」
兄様は私を大切にしてくれるけれど、仕事にはかえられない。
公務で忙しい兄様はこの国にいることすら少ないのだから。
「ユノは自分が思ってるよりもたくさんの人に愛されてる。もっと自信を持てばいい。」
「それは...」
あなたも含まれるの?
聞きたいことは多いけれど、それがうまく言葉にできない。
トワは優しい言葉はくれるけれど、私のほしい言葉はくれない。
いつだってそう、それは変わらない。
「今は分からなくても、いずれ分かる時がくる。
ほらせっかくユエが作ってくれたスープだ、飲もう。」
「よろしければトワ様もお召し上がりください。」
「ありがとう。ほら、ユノ。」
「...ありがとう。」
優しさは時に人を傷つける、と何かの小説で読んだことがあるけれど、本当にその通りだと思う。
その優しさの本当の部分は、誰も受け取ることができないのだから。
彼が与えてくれる優しさは一時的なもので、それですら私を慰めるためのものでしかない。
………そんなの悲しくて寂しいだけ。
「ユノは笑っていればいい。この世界は美しいはずだとあの人は仰っていた。
それが本当かどうか、いつかその目で確かめるのはユノの仕事だ。」
「あの人って...?」
「...ユノが笑っていることを誰もが願ってるんだよ。」
私の問いは爽やかな笑顔で流された。
生ぬるい風がトワの髪を揺らす。
トワの銀色の髪は風を具現化したみたいに透き通ってる。
彼の髪もまた、国では重宝されていたらしい。
トワは自分の国のことを一切話さないから、エヴァ兄様から聞いた話だけど。


