盛大に行われたお母様の葬儀から一夜明けても、町は暗いままいつもの明るさを取り戻すことはなかった。


せっかく帰ってきたエヴァ兄様も、トワのことすら喜ぶ気にもなれなかった私は、1日中部屋に籠っていた。


「ユノ様、何か召し上がられませんと、ユノ様まで体調を崩してしまわれます。
スープを作ってまいりましたのですが、いかがですか?」

「...いらないわ。」

「ユノ様...」


ユエに心配をかけたいわけではないけれど、とても食事なんて気分じゃなかった。
トレーを持つユエの表情が沈む。

あぁ...あなたにそんな顔をさせたいわけじゃない。
けれど、食べるとは言えなかった。



ユエが部屋をでようとしたそのタイミングで、扉がノックされる。
ユエの体がびくっと跳ねた。

ユエが近くのテーブルにトレーを置き、扉を開く。

扉の向こうにいたのは、トワだった。


「ユノ、朝から何も食べてないんだってな。侍女長も次期国王もユーリも心配していた。」

「とても何かを口にする気分じゃないの。」

大好きな人でも、大切な人を失った今、話す気分になれなかった。


「...じゃあ、中庭にでないか?ここ最近、お前も外にでていないだろ?
ユエ、そのスープも持ってこい。」

「畏まりました。」

「なんで、勝手に...」

「いつまでも塞ぎこんでることをホーリス様は望まない。
あの人は誰よりも外にでたがっていたから。
外に出れるやつが中に閉じこもったままならホーリス様はきっと代われと言うだろう。」


トワの言うことは正論。
お母様は昔から屋敷にこもりがちで、あまり外にでれなかったらしい。
それでも王妃として、少しでも国民に顔を見せようとしていたお母様を尊敬していた。


「...そうね。少し気分転換でもしようかしら。」


トワと一緒なら、少しは変わるかもしれない。
お母様は塞ぎ込むことなんて望んでいないから。