「いや、でも…。本当に大丈夫かな。確かに自分のお店をいつか持つのが夢ではあったけど。こんな急に…」
「大丈夫だ。棗君もいるんだ。一人じゃないから、きっと上手くいくよ」
お父さんの言葉にあたしも覚悟を決めて頷いた。
「そういえば、パティシエの人、棗君って言うの?」
ふと、お父さんが言った名前が気になって聞いた。
「あぁ。名前言ってなかったな。桐島棗[キリシマナツメ]君って言うんだ。確かお前と同じ25歳だったはず」
「そうなんだ。桐島さんかぁ。同い年なのにそんなすごい人で仲良く出来るかな」
「出来るだろう。すごく良い子だったからな」
お父さんが笑顔で言った。
「そっか!」
あたしも笑って返した。
どんな人なんだろう…。
かっこよくて腕も良いなんて、楽しみだなぁ。
恋とかに発展しちゃったらどうしよう///。
勝手に桐島さんに対して期待を膨らませていた。
だけど後に、この浅はかな考えにあたしは後悔することになる。
