「すみません、お待たせしましたー。パティシエの桐島がオススメを紹介させて頂きます」
そう言って桐島を前に突き出した。
「あ、おい!」
いきなり前に出されて柄にもなくちょっと焦っている。
"てめぇ、後で覚えてろよ!!"
桐島がすごい目つきであたしをひと睨みしながら小声で言ってきた。
あたしは、目をそらして気づかないふりをする。
「いらっしゃいませ。パティシエの桐島と言います。本日はご来店ありがとうございます」
お客様の方に向き直ると、ニッコリと笑顔で桐島が言った。
相変わらずの外面の良さ…。
あの笑顔にみんなだまされていくんだろうな。
まぁ、お客様の前でいつもの桐島でいられても困るけど…。
お客様の前に出た瞬間の変わりようの早さに呆れるしかなかった。
