調理を始めてから約一時間後、パイ生地は昨日作っていたので、いつもより早く完成させることが出来た。
見た目も綺麗に出来たし、焼き加減も上出来!
これなら、いけるはず!
あたしは、自信を持ちながらもドキドキしながら、隣のテーブルで試作を作り続けている桐島に近づいた。
「桐島、今ちょっといい?」
「何?」
何かの生地を混ぜる手を止めず、視線も手元に向けたまま口だけで返事をした桐島。
その態度にカチンとしたけど、桐島の前にアップルパイをのせたお皿を差し出した。
「試作品の味見をして欲しくて。お互い試作したものは、両方が納得したものだけ店頭に並べるっていう条件でしょ?だから、このアップルパイの味見をお願い!」
そう言うと、桐島はやっと手を止めてこっちを見た。
無言でお皿を受け取ると、アップルパイを一口サイズに切って口に運んだ。
ドキドキしながら、その光景を見ていた。
