機嫌良く厨房の戸を開けて、作業中だった桐島と目があった瞬間、あたしは桐島がいたことを思い出した。
そうだ、レシピ考えてテンション上がってて忘れてたけど、厨房ではこいつが試作してるんだった…。
桐島は入ってきたあたしをチラッと見たけれど、すぐに視線を戻して作業に集中していた。
なんか嫌な感じ…。
桐島の態度にムカッとしたものの、あたしも無視を決め込んで、コックコートを着てから試作作りを始めた。
とりあえずアップルパイから作ろうかな。
このアップルパイで今度こそ桐島に「美味い」って言わせるんだから。
今までのクッキーやフィナンシェ、パウンドケーキはとりあえずの及第点とか散々言われたからなぁ…。
アップルパイだけは、特に自信のあるものだからこそ認めてもらいたい!
そう強く思いながら調理に没頭した。
