お昼のチャイムが鳴った

「あれ、藤原さんお昼は?」

「私はあります。大丈夫ですよ?」

「そうかい、お疲れ様」

課長に誘われなくてよかった…

昨日は行けてないから

今日は行かなきゃ

「夕星さん!…行くんですか」

「え、行くけど…」

「止めても…」

「うん、ごめんね、じゃ」

なんであんなに悲しい顔をするんだろう

今日はどこも触られなかったな…

「あ、夕星さん!」

「あ、琴原さん!」

この人は

琴原雪乃 (ことはら ゆきの)さん

拓斗の専属看護師で、仲良くなった

植物状態になってから、2代目でずっといてくれる。

「拓斗は…」

「今日から個室入りよ、他の患者さんにもそろそろ怖がられるからって」

「そうですか…」

良かった…

個室なら、安心して話しかけられる

いつも恥ずかしいのよね…

「じゃあ私は仕事に行きますね、204号室が近藤さんの部屋です」

「ありがとうございます、では」

204…

204……

「あった、ここか…」

これで起きてたら…

どんなに嬉しいか

そんな事ありえないけどね

「失礼します」

まだ寝てるよね…

「拓斗、久しぶり
髪伸びて……まぁ一昨日ぶりだけど…」

綺麗な顔…

早く喋りたいよ

「仕事大変だよ、拓斗がいたら今は結婚出来たのかな?拓斗が起きてたらお花見して、お祭り行って、色んなとこいって…いっぱいいっぱい、デートしたら…どうなってたか」

こんな事考えちゃいけないのに

「また…来るからね、」

私は拓斗の手を握って、病院を出た