拒絶された後の憂さ晴らし

「……触らないで!貴方とはもう何の関係もないから」


睨みつけるように手を振りほどき、颯爽と立ち去る。


嫌だ、嫌だ、嫌だ────!


流されてしまう前に、以前の感情を取り戻してしまう前に逃げなければいけない。


愛情なんてなくても思い出してしまって、流されてしまったら負けなのだ。


「………っ痛、」


喫煙所から逃げるように立ち去ってしまい、前を向いて歩いていなかった私は誰かにぶつかり、左肩に鈍い痛みを感じた。


「…ってぇなー。てゆーか、お前…何で泣きそうなんだ?」


「か、…関係ないでしょ!」


謝る前に声をかけられ、その相手が添野だと分かった瞬間に突き放す言葉を浴びせる。


泣きそう?私が?


そんなハズはない。


元カレに泣きそうになる、そんな感情なんて心の中にない。


………そう思いたい。


添野を振り切り、自分の部署へと戻ろうと思った時、腕を掴まれた。


「まだ、アイツに振り回されてるの?」


「……え?」


「海外事業部に転勤になったアイツだよ。一旦、帰国したって聞いた」


「な、何であの人の事を知ってるの?」


「………さぁね?」


何かを知ってるかの様にクスクスと笑い、人を小馬鹿にする様な態度を取る添野に次第に腹が立つ。


無性に煙草を吸いたくなるが、元カレがまだ居るかもしれないから今は駄目。


我慢しよう…。