拒絶された後の憂さ晴らし

喫煙所に行けば会えるだろうか?


出来れば二人しか居ない時に話がしたい。


広い社内で煙草を吸うタイミングがほぼ一緒だなんて、運命だと信じても良いのかもしれない。


お願いだから、喫煙所に居て下さい。


仕事を終えた後に祈りを込めて、喫煙所へと向かう。


首筋に付けられた跡を思い出して、鼓動が早くなる。


「…お疲れ様」


お目当ての人物が居て、しかも二人きりなので単刀直入に切り出す。


「やっぱり、居た!私、分かったわ。眼鏡君は添野自身だったのね。」


「だから何だよ?」


「別に…!ただ謝りたくて来たの。添野の事を覚えてなくて…」


「覚えてなくて丁度良かったのに。地方営業に回されて名誉挽回して本社に戻って来たら、偶然にもモモちゃんから話かけられた。だから拒絶された仕返しをしてやろうと思ってたのにな…。そのふわふわウェーブのモモちゃん見たら…」


添野は煙草の火を消して、煙がまだ目の前を掠める中で私をそっと抱き締めた。


「仕返しなんてどうでも良くなった。新入社員の時に会ったモモちゃんを思い出して…また手に入れたくなった…。ヘアスタイルとか見かけを変えてどんな女と付き合っても、モモちゃん以上の女なんて居なかったんだ…」


抱き締められている両腕に力が入って、少しだけ痛い。


「……だから振られた腹いせの憂さ晴らしなんて止めて、本気でモモちゃんを手に入れるから。そのつもりで居て…?」


「………はい。私ももっと可愛い女になるから、今みたいに優しく接してね」


「努力する……」