ブラッディムーンまであと2週間に迫ったある日のことだった。

かなたはいつものように庭に洗濯物を干していた。
垣根の向こうから一人の男性が中庭を除き込むようにして立っているのが見える。

この村には結界が張ってあり、緋色眼の人狼以外がこの場所を見破るのは難しいはずなのに,,,。

「あ、あなたは誰ですか？」

近づいてくる男性に怯むことなく、かなたは真正面から尋ねた。

「僕はヒロト。君は、緋色眼の人狼、かなただね？」

"私のことを知っている。この男性はいったい,,,？"

かなたと男性の距離が1m程度になったとき、家の中から空月が"ガルッ"と呻きながら出てくるのが見えた。

ヒロトとかなたが空月を振り返る。

「銀狼もいたのか,,,」

ヒロトの呟きに、かなたは目を見開いて

「あなたは何を知っているの？」

と言った。

男性はかなたと同じ位の年齢のように見える。柔らかそうな栗色の髪に真っ青に染まった碧眼を持っている。

かなたの側に空月がピタリと寄り添った時、ヒロトは思いがけない事実を語り始めた。