「どう?彼氏とは」

「まあ…仲良くさせてもらってます」

たはー!とゆりなが顔を赤くして笑う。
無事付き合えた事を報告してからは、ランチに誘われる回数が増えてあれやこれやと聞かれる様になった。
恥ずかしいけど満更でもなくて、見事な浮かれ頭っぷりに自分でも驚く。

「そろそろ一か月くらいか〜。
通り道なんでしょ?いつも帰りに寄ってるの?」

「まあ最初の頃はわりと通ってたけど、最近はあんまり」

「え?何で?」

「あっちの仕事が忙しくて」

「あれ、何やってる人だっけ」

「在宅ワーカー」

「いやだから、何やってるの?株関係?」

「えっ…」

私はそこで気づいた。彼が何の仕事をしているのかちゃんと分かっていない事に。
浮かれ頭って恐ろしい。

「そこ聞いてないの?
んもう、せっかく恋人同士なんだから、それくらいは分かってないと」

「た、確かに…」

私はすぐに彼にメッセージを送る。
しかし最近の彼は本当に激務すぎて、恐らく返ってくるのは夜か明日だろう。

忙しくなら始めた頃、心配になって見に行ってみれば死んだ様な顔をしていて、台所はまたぐちゃぐちゃ。
その割にリビングや寝室はそんなに散らかっておらず、ほとんど仕事部屋に缶詰状態の様だった。

もうすぐで落ち着くからと言っていたが、普通に心配である。ご飯の差し入れなどなるべくサポートはしているが、果たして大丈夫だろうか。

中々いいマンションに住んでいるし、低所得という訳でもなさそう。彼は本当に、何をやっている人なんだろう。