「えっ?」

比較的朝が弱いはずの私だが、さすがにバッチリ目が覚めた。

なんだ、これは。
体は硬直させたまま、目だけ右往左往させて状況を理解しようとする。

起きずとも分かる、この気持ち悪さ。
これは確実に、アルコールを大量摂取した証。

それはそうだ。
昨日は会社の飲み会。

二次会まで行ったのは覚えているが、もちろんその先の記憶はない。

全く見覚えのないこの部屋には、紺色のベッドのシーツとカーテン、黒い間接照明らしきものが置いてある。
この色調もないこざっぱりとして、必要最低限の物しか置かれていないこの感じ。

確実に男の人の部屋だ。

その部屋主は不在であるが、おそらく横で寝ていたのだろう。
少しへこんだ枕がとなりに並んでいた。

恐る恐る体を起こす。
ズキンと頭が痛み、そのまま抱え込んだ。

やっちゃったんだろうか…
私、やっちまったんだろうか…?

一応、服は着てるみたいだが、おそらく借りたのだろう大きめのTシャツ一枚のみ。
そして下着は、下だけは履いているという、至したのか至してないのか、何とも微妙なライン。

とにかく分かったことは、酔っ払って見知らぬ男の人の部屋に上がり込み、一緒のベッドで一夜を共にしたという事だった。

「…………え、相当やばい…?」

整理がついたらついたで、大分ひどい状況だった。
ドッと汗をかき、思わず倒れそうになる所を必死にこらえる。

思い出せ。とにかく思い出すのだ私。

(二次会に行ったまでは覚えてる。
そこでゲームが始まって…負けまくってその罰ゲームで一気して、スイッチ入っちゃって、もう色々溜まってたから自暴自棄になって、どんどん持ってこーい!みたいな感じになっちゃって…で、もう一軒行こうみたいになって…それで…えと…えーーと……)

ない頭をフル回転させて記憶を辿っていると、何か物音がして肩が跳ねる。

よく耳を凝らしてみると、スリッパを擦るような足音がこの部屋に近づいてくるようだ。

ああ嘘だ。もう現実と向き合わなければいけないのか。

そんな絶望する私を置いて、無情にもその扉は開かれるーー…。