はねいし。

振動が遠ざかったのを感じて、そっと後ろを振り返る。

男バスと女バスが、二列で一緒にランニングをしてた。


ちらっと見ただけで、アタシはワタルの姿を見つける。

そんなに背は高くないけれど、いつもすぐ見つけることが出来ていた。


「……。」


気づかれないうちに、元に向き直る。







「次はトスとレシーブ」

キャプテンのよく通る声。
ストレッチの後は、いつもこういう順番で練習を始める。


いつものように、美雪と二人組みになって、軽いオーバーハンドトス。

トンッと、小気味良い音をたてて指先から離れるボール。

その音が、なんだかいつもより遠くに聞こえた。