教室に着いて、鞄を机の上に置く。
隣の席に目を移すと、聖夜くんの姿は無かった。
少しだけ張りつめていた糸が緩んで、ホッと息を吐く。
聖夜くん、苦手なんだよね。
「あ」
はっきりと、聞こえた。
ざわざわしているはずの教室なのに。
その声がクリアに聞こえた。
「あんた、来たんだ」
「っ……。聖夜くん、おはよう」
吃驚した。
あれだね、噂するとその人が来るって良く言うよね。
まさにそれだ。
「もう平気なの?無理したりしてない?」
「うん。元気100倍だから」
「ふーん。そ」
相変わらず、無愛想。
いつも通りの、聖夜くんだ。
