「……ぃ」
ん……。誰かの声がする。
ぱちっ。目を開けると、
「あっ起きた。帰るぞ。」
「…て……ん?」
少し寝れたけどまだ熱があるのか、ひどく頭が痛む。そして視界が定まらない。
「俺だよ。イト。」
やっぱり天だ…。
ちゃんと顔が見えなくたって声でわかる。
「帰る…。」
「まだ熱あるんだろ?ほら、背負ってるから、
…ん。」
私に背中を向けてしゃがみこむ天。
「…ありがと……、天…。」
少し恥ずかしいけど天におんぶしてもらう。
天に何回こうしてもらったか分からない。
幼稚園の時ブランコから落ちた時も、
小学生の遠足の山登りで足をひねったときも、
中学生の文化祭で貧血で倒れた時も…。
いつだって天が助けてくれた。
「いつもそんくらい、
素直だったらかわいいのにな。」
くしゃっと笑いながら言う。
「ママはいつでも
かわいいって言ってくれるわよ……。」
「ははっ、はいはい。」
いつだって素直になれない私。
いつか天にこの気持ちを、
伝える時が来るのかな………?
私はこの時天で頭がいっぱいではるのことを忘れていた。